演習問題4

細胞小器官と病態
ある遺伝病Xでは、細胞にスフィンゴ糖脂質やプロテオグリカン(タンパク質に多数の糖鎖が結合した化合物)が蓄積し、分解されるべき物質が蓄積するために細胞が傷害されることが判明している。
Xの病因を調べたところ、ある単一酵素の遺伝子の異常症であることが判明した。
補充問題
(((分解される)))べき物質が、分解されないと細胞は死ぬ。
不要な細胞を分解する細胞内小器官は?
(((リソソーム)))
問1Xの発症に関与している細胞内小器官は何か?
(((リソソームlysosome)))
問2問1の細胞内小器官は内部が強い酸性に保たれてることが分かっている。これを可能にする仕組みはどのようなものか。
(((プロトンをリソソーム内に能動輸送している。)))
問3問2の機構の類例は細胞膜内外のイオン濃度勾配の維持にも働いている。細胞外の陽イオンとして最も多いのはなにか。化学式で示せ。イオンの価数も正しく示すこと。
(((Na+)))
問4問2の機構に障害があったら、やはりX類似の病態を発症すると考えられる。それはなぜか。
(((リソソーム内部がリソソーム分解酵素の至適pHではなくなるため。)))
補充解説
スフィンゴ糖脂質とプロテオグリカンでは分解酵素は全く違うはず、ではなにがこれらを分解しているのか?→リソソームが分解(リソソーム分解酵素)している。リソソーム内は、pH4~5の酸性に保たれているが、これはリソソームの膜にプロトンポンプが発現して能動輸送でH+を中へ送り込んでいるためである。
問4はプロトンポンプ原因によるリソソーム異常の話である。プロトンポンプはATPase活性を持っているので酵素と言えるが、このポンプに異常があるとプロトンがリソソーム内に送られなくなり、リソソーム内の至適pHである4~5を保てなくなり、リソソームは働かなくなる。
問5Xの異常は、問2の機構の障害ではなかった。それではどのような発祥機構が考えられるか?推定して述べよ。
(((リソソーム酵素をリソソームに局在させるための修飾反応は、どのリソソーム酵素に対しても共通の酵素が触媒していると考えられる。Xはこの酵素の異常症であると考えれば、Xが単一酵素の異常症であることを説明できる。)))
補充解説
問5は、リソソームのプロトンポンプ異常ではなく、別の異常についての考察である。リソソームには数多くの分解酵素が集まってくる。その集まってくる共通の機構があるはずで、それはマンノースの6リン酸化であり、これが破綻しているとリソソームは働かない。
マンノース6リン酸化酵素の欠損によるリソソーム異常
リソソーム酵素をリソソームに局在させる(小胞のまま留まらせること)ためには、特定のアミノ酸がリン酸化を受けなければならない。このリン酸化酵素が欠損するとリソソーム酵素は、ゴルジ体からリソソームに送られず(小胞体として残れず)膜タンパク質と同じ扱いで細胞外へ分泌されてしまう。そうするとリソソーム酵素が細胞内にないので、分解すべき物質が分解できず発症する。→Icell症