復習問題

細胞膜は主に(((リン脂質/グリセロリン脂質)))とタンパク質からなり、細胞内外を分ける仕切りを作っている。ほとんどの物質の細胞への出入りは、細胞膜にあるタンパク質の働きで調整されている。水の出入りも水チャンネルと呼ばれるタンパク質によって調整されている。
水チャンネルの働きは、次のような実験から分かった。まず3つのアフリカツメガエルの卵母細胞P,Q,Rを用意した。卵母細胞Pには水チャンネルの遺伝子から転写されたmRNAの水溶液を注入した。a卵母細胞QにはmRNAを含まない水だけを注入し、卵母細胞Rには注入操作をおこなわなかった。これらの卵母細胞を三日間等張液の中に置いた後、水で液を3倍に希釈して卵母細胞の容積を比較したところb図に示した結果が得られ、卵母細胞Pで新たに作られた水チャンネルが、細胞膜の透過性を高める働きがあることがわかった。

その後の研究によって水チャンネルが卵母細胞の細胞膜に運ばれるまでに粗面小胞体から(((ゴルジ装置)))を経由すること、運ばれる途中で4量体を形成していることがわかった。
問2下線部aで卵母細胞Q,Rを用いた実験を行っているが、このような実験を一般になんと呼ぶか。またそのような実験を行う意義をこの例に則して簡単に説明せよ。
(((対照実験)))
意義(((この例の場合、卵母細胞Pで起きた結果は、水の注入や注入操作そのものによって起きたものではないことを確認・証明しておく意義がある。)))
※生物学の実験には必ず対照実験(コントロール)を置く。mRNA水溶液を注入した細胞Pで水透過性の亢進が起きたわけであるが、これだけでは実は断定はできない。「水を入れたことが原因かもしれない」、「細胞に何か注入するという刺激だけでも同じことが起きるかもしれない」というツッコミが入る余地があるからである。
問3下線部bで図のX点で卵母細胞Pに起こったことを、類似の例を挙げて簡単に説明せよ。
(((溶血と同時に細胞が破裂した)))

腎性尿崩症と呼ばれる病気の一部は、水チャンネル遺伝子の突然変異によって尿細管の水チャンネルのアミノ酸置換が起こっており、c腎臓がバソプレシンに反応できなくなってしまう。この突然変異による病気の遺伝形式は、アミノ酸の置換のされ方によって、優性の場合と劣性の場合とがある。このうち、劣性変異をヘテロに持つ細胞を調べたところ、細胞膜とゴルジ装置には正常型の水チャンネルが存在し、細胞膜の水チャンネルは正常に働いていた。また、d変異型の水チャンネルは転写・翻訳はされているものの、ゴルジ装置にも細胞膜にも存在しなかった。一方、優性変異をヘテロに持つ細胞を調べたところ、e細胞膜の水チャンネルの働きは著しく低下していた。また、この細胞のゴルジ装置には、正常型と変異型の両方の水チャンネルが存在していた。
問4下線部cの理由をバソプレシンの生理作用に基づいて簡単に説明せよ。
(((バソプレシンは腎尿細管(集合管)の水透過性を亢進させることで抗利尿作用を発揮するが、尿細管における水の透過は水チャンネルがおこなっているから、水チャンネルに変異がある場合は、バソプレシンの効果は現れない。)))
補充解説:血液の浸透圧が(((上昇)))すると脳下垂体後葉がバソプレシン(抗利尿ホルモン)を分泌し、腎細管や集合管での水の(((再吸収)))を(((促進)))する。この結果、尿量は(((減少)))し、血液中の水分が(((増加)))するため、浸透圧は(((低下)))する。
問5下線部dで劣性変異型の水チャンネルは翻訳後にどのような運命をたどると推定されるか。2つの異常の可能性を挙げ簡潔に説明せよ。
①(((ゴルジ装置以外の部位に輸送される)))
②(((小胞体に貯留する)))
③(((細胞質に貯留する)))
④(((細胞質で分解される→実際にはこれかと)))
問6eの理由を説明せよ。ただし、野生型の水チャンネル遺伝子がホモを持つ細胞と比較して、この細胞の細胞膜に機能を持つ水チャンネルがどれほど存在するかに着目して論ずること。
(((この変異細胞では、正常の水チャンネルと変異型水チャンネルが1:1の割合で産生されているので、正常の水チャンネルが正しく4量体を作れる可能性は、(1/2)^4=1/16にすぎない。ゆえに細胞膜に輸送される水チャンネルはせいぜい1/16に激減している。)))
問7バソプレシンは尿細管で水の再吸収に関わるホルモンであるが、尿細管でイオンの再吸収や分泌に関わる最も主要なホルモンはなにか。名称と産生臓器を記せ。またそのホルモンの作用機構について知るところを記せ。
(((アルドステロン(鉱質コルチコイド):副腎皮質で産生)))
(((このホルモンはステロイドホルモンであり、その受容体は細胞質に存在する。細胞膜を通過したアルドステロンは受容体と結合し、受容体は核内に移行してアルドステロンの標的遺伝子の転写を活性化する。)))