補充問題

レトロウイルスは、一般に図1のような粒子構造を有する。

レトロウイルスが細胞に感染する際、ウイルスエンベロープタンパク質が細胞表面のウイルス受容体と結合することにより、ウイルスが細胞内へ侵入することができる。感染成立後は、ウイルスゲノムが複製され、またウイルスゲノム由来のタンパク質が生成され、これらが会合して新たなウイルス粒子が産生される。つまり感染が成立した細胞では、ウイルスエンベロープタンパク質も生成されるわけであるが、この生成されたエンベロープタンパク質は、細胞のウイルス受容体と結合し、受容体上のエンベロープタンパク質結合部位をふさいでしまう。そのため、この感染細胞では、同じウイルスの新たな感染は生じない。
ここでエンベロープタンパク質の受容体結合部位のみがことなる5種類のレトロウイルス(Va,Vb,Vc,Vd,Ve)があるとする。これらのレトロウイルスはすべて細胞Pに感染することができる。このうち、レトロウイルスVaの受容体はJで、レトロウイルスVaは受容体Jが発現していない細胞には感染できない。同様にレトロウイルスVbの受容体はKでレトロウイルスVcの受容体はLでレトロウイルスVcは受容体Lが発現していない細胞には感染できない。
これらを用いて細胞Pへの重複感染実験を行った結果を表1に示す。

例えば、細胞Vbの感染を試みたところ、Vb感染は成立した(表1の*1)。さらに細菌Qを用いて、まず、それぞれのウイルスが感染しうるかどうかを調べ(表2)、重複感染実験をおこなった。なお表の一部は空欄にしてある。
問1
AレトロウイルスVdは、J,K,Lのうちどれを受容体として利用しているか。
(((受容体JとK)))
BレトロウイルスVeは、J,K,Lのうちどれを受容体として利用しているか。
(((受容体J)))
C受容体J,K,Lのうち、細胞Qに発現していないと考えられるものはどれか。
(((受容体K)))
D表3の*2の空欄に+か-かを入れよ。
(((-)))
E表3の*3の空欄に+か-を入れよ。
(((-)))
問2まずレトロウイルスVaを感染させ、感染成立後、レトロウイルスVdの感染を試みたところ、細胞P(表1の*4)と細胞Q(表3の*5)とで異なった結果が得られた。考えられる理由について150字以内で述べよ。
(((細胞Pには、J,K,Lが存在するから、1回目にVaを感染させてJが占領されても、VdはKを利用して重複感染できる。細胞QにはJ,Lが存在するがKは存在しないから、1回目にVaを感染させてJが占領されるとVdは感染できない。)))
問3まずレトロウイルスVaを感染させ、感染成立後、レトロウイルスVeの感染を試みた結果も、細胞P(表1の*6)と細胞Q(表3の*7)とで異なっていた。考えられる理由について150字以内で述べよ。
難問(((Veは、J,K,L以外にも利用できる受容体を持つ。それをMとするとMは細胞Pには発現していないが、Qには発現していると考えられる。)))